人生音痴

新婚生活。迷子になるから、手を引いていてね。

結婚初心者、結婚は幸せだと語る。

わたしたちは昨年11月に入籍し、その日から一緒に暮らし始めた結婚初心者だ。子どももまだいない。結婚と同時に義実家で同居という必要もなく、ふたりぼっちで暮らしている。夫のことが大好きで、これまで生きてきた中で一番幸せな生活を送っているところだ。まさに「今が一番いいとき」。ピークという意味ではなく、あくまでこれまでの人生の中では一番。今後下っていくのかまだまだ上り調子なのかは、わたしには分からない。

 


夫への愛情は、子どもができれば落ち着くと聞く。しかし子どもがいないいま、わたしの愛情の全ては夫に向いているのだろう。正直何をやっていても可愛いし、ムカついてもご機嫌とりされればすぐご機嫌になってしまう。これがいつか「ただのオジさん」になってしまうと思うと惜しい。いや、すでにただのオジさんなのだけど。今、わたしが夫を見るときには、50センチ以上の厚さを誇る夫大好きフィルターがかかっている。

 


結婚すると、「幸せ?」と聞かれ、「いいなぁ、新婚さんだもんね」と言われる。「今だけだよ」とも。それから「うちなんてさ」と続き、愚痴になっていくのが定番で、わたしはほとんど自分のことを語らずに会話は終了する。

 

 

本当は、「幸せだよ」と叫びたいのだ。

 

 

独身時代、結婚できるかという不安と一緒についてまわったのは、「こんなに頑張って結婚したところで幸せになれるのか」という恐怖であった。

 

周りは配偶者の愚痴ばかり言う。
きっと本当に嫌いなわけではないだろうとは思うが、「嫌になっちゃう!」と話す。そんな話ばかり聞いていたから、わたしはよく結婚したばかりの友達に「ねえ、結婚は幸せ?幸せだよね?」と縋るように聞いていた。

 


おそらくみんな、自分が幸せだとか楽しいとか嬉しいとか、そういう話はしにくいのだ。自慢だマウンティングだと言われることに怯えてしまう。不幸話や愚痴話なら、怯えることなく共感を得られるから。

 


でも、幸せだったはずなのに、謙遜が癖になって肥大化して、愚痴しか出なくなっているとしたら…と考えると、恐ろしい。

 


わたしはいま、幸せだ。
大きな声で他人に言うことは憚られるが、幸せかと聞かれれば幸せだと応える練習をしている。


毎日朝起きたら隣に夫がいて、一緒にコーヒーを飲んで、行ってらっしゃいとキスをして見送る。あ、キスは5回くらいする。あとぎゅっと抱きしめる。鬱陶しがられるまでする。それから、仕事に行って帰宅し、夫の帰りを待つ。夫から帰るよとラインが来る。車の音が聞こえ、階段を上る音、そしてドアが開く音が聞こえる。「おかえり」「ただいま」と交わす。一緒にご飯を食べる。たくさんたくさんお喋りをしているうちに、睡魔に負けて夫の膝枕で眠る。日付がかわる頃、一緒にベッドに行き、一緒に朝まで眠る。

夫の実家に行けば笑顔で迎えられる。自分の両親も「夫くんはどうしてる?」と気にしてくれる。生理が遅れても焦ることはないし、子どもが出来たら喜べばいい。もうわたしたちは、法律的にも、社会的にも、世界中に認められたカップルなのだから。きっと祝福されるだろう。


こんなに幸せなことを、謙遜なんかで汚してはいけない。

 


同じく新婚の友達に、思い切って「ねえ、結婚って幸せだよね?」と聞いてみたことがある。その子は笑顔になって、「幸せ!」と応えてくれた。


愚痴だって言うし、配偶者にムカつくことだってたくさんある。でも、わたしは幸せだって思えている限り、ずっと、「それでも結婚って幸せだよ」なんて言い続けたいと思っている。

 


「新婚だもん、今だけよ!」って笑いたい人は笑えばいい。そして自分の現状を嘆き続ければいい。
「新婚だから幸せ」で上等じゃないか。これより先、幸せじゃなくなるか、維持できるか、より幸せになるかなんて、わたしには分からない。


お金持ちで幸せな人、いい家族に恵まれて幸せな人、美味しいものが食べられて幸せな人、友達がいっぱいいて幸せな人、趣味に没頭できて幸せな人、彼氏に愛されて幸せな人、新婚さんで幸せな人、長年連れ添ってずっと幸せな夫婦。世の中の幸せな人に、できればもっと幸せだと叫んで欲しい。それがこの先、生きる希望になる気がするから。

 

いまはたくさんの幸せを謳歌しよう。できれば周りの幸せな人たちと一緒に。