人生音痴

新婚生活。迷子になるから、手を引いていてね。

わたしたちが夫婦になった話①プロポーズ

前回書いた通り、わたしは半ば脅すような形でプロポーズしてもらった。みんながウキウキと過ごすプロポーズ直前の毎日が、わたしたちの関係において最低の時だったかもしれない。

 

結婚しないなら別れると告げてから、期限であるわたしの誕生日を迎えるまで、夫は随分悩んだらしい。

 

先日、五味八珍で餃子をつつきながら、その時の気持ちをぽつぽつと話してくれた。
「今じゃない」と思っていたこと、自分の要求は通っていないと感じていたこと、わたしが休職中だったこと、それでもやっぱり今がタイミングかもしれないと思い直したこと。
わたしはラーメンを啜りながら、それは悪いことをしたねえ、と答えていた。

 


そんな、悩みや義務感の中で、特別情熱もないプロポーズであったのだろう。
特別なことはなにもない、記念日でもない、普通のデート中に、毎週のように通る道で、普段乗り慣れている車の助手席で、わたしの一生に1回のプロポーズは終わった。
誕生日の10日ほど前のことだった。

 


「あと10日もすれば別れるかもしれないんだし」
「別れない」
「え?」
「一生別れないことにした」

 


わたしはプロポーズされたら泣く予定だったのに、へらへらっと笑ってしまう、そんなプロポーズだった。


ロマンチックなことはなにもしてくれない人だけど、プロポーズくらいはシンデレラ城の前かもしれない、夜景の見えるレストランで指輪のケースを開けてくれるのかも、抱えきれないほどの薔薇の花束をもらったらどうしよう、そんな風に浮かれた気持ちは一瞬で消えてしまった。


それでも、嬉しかった。飛び跳ねたいほど嬉しかった。夫が結婚に関して一生懸命考えてくれたこと、すごく悩んで決めてくれたこと、悩み抜いてわたしを選んでくれたこと。照れ屋の夫なりの精一杯が透けて見えるような言葉で、マンガのようなプロポーズとは程遠いけれど、わたしは割と気に入っている。

 

「一生別れない」
たくさんの覚悟と、長い長い約束が詰まった言葉。


プロポーズされて大号泣することも、目の前で指輪のケースを開けてもらうことも、大きな花束を抱えて帰ることもできなかったけど。

 

それでもその足で本屋に寄って、ニヤニヤしながらゼクシィを買って、それを抱えて帰った時の特別な気持ちを覚えている。

 


何ヶ月か結婚生活をしてきて、いまは「今思えばあれが一番いいタイミングだった」「これ以上先に行くと結婚は難しかっただろうし、これより前だともっと遊びたいと思った」という言葉が何度となく夫から出てきている。

 

結婚して良かった、と言わせるにはまだまだ日が浅い。だから10年後、「結婚して良かったでしょう?」と聞いてやろうと決めている。

 

照れ屋の夫はきっと、スイートテンダイヤモンドなんか用意してくれないだろうけど。